法人向け生命保険の一部販売停止について思うこと。
代表の上山です。保険の業界に対し、思うことを書いてみます。ちょっと長文ですが・・・(^_^;)
■どうして販売停止?
先月の2月14日、新聞紙面やインターネットニュースで「法人向け節税保険の販売停止!」という記事が掲載されました。これは前日の13日に国税庁が、法人向け生命保険にかかる課税処理を見直すと保険会社に通達したからです。
保険会社は全社横並びで、課税処理を見直すと指摘を受けた保険の販売停止を決めました。私はこの対応について(保険会社も販売停止を求められた側面もあるのでしょうが)納得がいきませんし、保険という社会に必要なインフラを供給しているにも関わらず、事なかれ主義で販売停止してしまう保険会社に対し、残念な気持ちでいっぱいです。
■節税保険ってどういうこと?
そもそも節税保険とはどういうものかざっくりと言うと、経費として計上できる保険にも関わらず、解約すると、お金が戻ってくる(帳簿上、使ったはずのお金が戻ってくる)というものです。しかし、お金が戻ってきたときには当然課税されますので、決して「節税」ではなく「課税タイミングをずれてしまう」保険です。ですから課税時の状況でたくさん税金を払うこともあれば、少なくてすむこともある不確定なものであり、節税・脱税を目的としたものではありません。
■保険の目的は・・・
中小企業の多くはこういった保険に加入しています(私自身の会社も加入しています)。どうして加入しているかというと、会社が持続的にかつ発展的に成長させたいという想いがあるからです。経営判断や社会情勢など、会社の存続は一筋縄ではいきません。そのような想定外の事態になっても、保険が財務基盤を整える役割の一部を果たすことで事態に耐えることができるのです。
実際、弊社のお客様でリーマンショックの時や東日本大震災の時に、保険を活用して事態を乗り切った会社がたくさんありました。「周りの企業が解雇や事業縮小を行う中、従業員を守り、大企業からも見放されなかったのは保険のおかげ!本当にありがとう!」とある社長に言われた時は、この仕事を選んで本当によかったと感じたものです。
■課税が変わろうが必要な保険には変わりないのです!
今回販売停止になった商品の一部には、たしかに課税の繰り延べ効果が行き過ぎた商品もありました。2年ほど前にある保険会社の担当者が「こんな良い商品でました!」と説明に来た時に、あまりに保険本来の目的とずれた商品だったことに腹を立て、こんな商品絶対に売らない!こんな商品を放置してたら、御上が黙っていないよ!と伝えたこともありました。
弊社は中小企業がお客様であるにも関わらず、課税の繰り延べ効果しかない保険は、極力お客様におすすめしていませんでした。中にはそれでも良いから入りたいというお客様も見えましたが、法人の税務・事業継続を考えて丁寧に説明すると、多くの方は見直されます。それでもリスクを覚悟で加入される方もいらっしゃいます。そこは真剣に経営されている経営者の判断ですから、ご理解いただいた上での判断であれば、その想いは尊重させていただいていました。
しかし、今回販売停止の対象になっている商品は本当に経営者にとって必要なものがたくさんあります。経営者である私自身が加入しているくらいですし、課税方法が変更されたとしても解約することは全く考えていませんし、その必要も全くありませんから。
■保険選びには正解はない
保険は金融商品の中で最もレバレッジを効かせることができる商品で、人間の絆と想いから始まった、人の英知の結晶だと思っています。
また、ありとあらゆる形態をとることで、お客様の想いを形にしていくことができます。つまり保険の形は十人十色。フルオーダーメイドが基本です。今回の販売停止はそのお客様の選択肢を極めて狭めるものであり、金融庁が掲げる「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)」からも大きく外れるものだと思っています。
■保険のチカラを伝えたい
先ほども述べたように、保険はお客様に応じた形で提供され、誰一人同じものはありません。なぜならば、お客様が必要とする保険のチカラは、お客様の想い、現在の体力、チャレンジする気持ちなどで絶え間なく変化していくものだからです。
今日の社会で、保険という制度を使わないで会社そして関わる人たちを守ることができるでしょうか?社会にとって絶対に必要なものを扱っているとしたら、私たちは正しい保険の使い方、正しい会社の守り方を伝える義務があると思っています。今回の販売停止は保険業界全体がそういったわれわれの義務をないがしろにしてきた結果なのかもしれませんが、そこで損をするのがお客様や社会であっては絶対になりません。
私自身が保険のチカラを正しく伝えていくことあらためて決意するとともに、現在の販売ができないような事態が1日でも早く収束するよう保険会社、そして日本に、プライドと責任感を持って対処していただきたいと望むばかりです。